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母から娘へ、受け継がれたエンゲージリング

海の季節がやってまいりました。

夏の計画を立てながら昨年のことを振り返っていると、葉山で開かれたワイン会へ出かけた日のことを思い出しました。生産者のお話を伺いながら、お手製のお料理とワインを味わい、帰りにはビーチへ。海の家から眺めたサンセットまで含めて、夏らしい思い出として心に残っています。

今回ご紹介するリフォームは、そのワイン会でご一緒した方とのご縁から始まりました。

後日、お客様からこんなご相談をいただきました。「母から受け継いだエンゲージリングを身につけたいと思いながらも、そのままの形ではコーディネートが難しく、高さも気になっていて。ちょうどリフォームができたらと考えていたところだったの」お持ちくださったのは、一粒のダイヤモンドを高く掲げる、プラチナの立て爪リングでした。

かつて婚約指輪の定番として広く親しまれた、存在感のあるデザインです。ダイヤモンドに多くの光を取り込み、石を大きく華やかに見せるため、爪や石座にはしっかりとした高さが設けられています。

日本では1970年代中頃から1980年代にかけて、ダイヤモンドの婚約指輪を贈る文化が広がり、プラチナの立て爪リングがその象徴的なスタイルとして定着しました。「給料の3カ月分」「ダイヤモンドは永遠の輝き」といった広告を覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その時代らしい華やかさが魅力である一方、現在の装いや暮らしの中では、高さが気になったり、ほかのジュエリーと合わせにくかったりして、身につける機会が少なくなってしまうこともあります。

お客様のご希望は、お母様から受け継いだ大切なダイヤモンドを、これからはご自身の日々に寄り添うジュエリーとして楽しめるようにすることでした。

そこで、ダイヤモンドを覆輪留めの石座におさめ、縁には繊細なミルグレインを施しました。爪を使わず、石の周囲を地金で包む覆輪留めは、引っ掛かりが少なく、日常にも取り入れやすい留め方です。石座を組み合わせたのは、丸みのあるフォルムが特徴のマテリオリング。リングの間に石座を挟み込むように仕立てることで、ダイヤモンドの存在感を生かしながら、できる限り高さを抑えました。

今回のリフォームでは、元のリングに使われていたプラチナ枠も溶解し、その地金を生かして新しい覆輪の石座を製作しています。受け継いだのは、ダイヤモンドだけではありません。長い時間をともにしてきたリングの素材も、新しい姿の中に残されています。ダイヤモンドの周囲にはプラチナの白い輝きを置くことで、石の透明感をよりクリアに引き立てました。リング部分にはK18イエローゴールドを使用し、肌になじむやわらかな印象に仕上げています。

プラチナとイエローゴールドを組み合わせたコンビカラーは、お手持ちのジュエリーや時計とも合わせやすく、装いの幅を広げてくれます。高さが気になり、なかなか出番をつくれなかったお母様のエンゲージリング。思い出も素材も大切に残しながら、現在の暮らしの中で気負わず楽しめるリングへと生まれ変わりました。

完成したリングを身につけられたお客様のお姿は、長く愛されてきたダイヤモンドが、ようやく新しい居場所を見つけたかのようでした。とても素敵に着けこなしてくださるご様子に、私たちも胸が温かくなりました。

このたびは、大切なジュエリーのリフォームをお任せいただき、誠にありがとうございました。(N)

ジュエリーリフォームのご相談は、お電話またはお問合せフォーム 公式LINE Instagramよりご予約を承っております。

Before
Before
After
After

✳︎ mill materio Diamond ring : Diamond 0.58ct 石座 Pt900 (元リングから再利用)リング K18
TRANSHIP JEWELRY
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